2025年5月2日金曜日

Hong Kong / 香港 2025年5月2日(金)

 What does ‘one country, two systems’ mean?

香港は何度も訪れた場所です。初めて訪ねたのは 1996年だったと思います。1997年の英国からの返還(handover)以前に訪れ、電車に乗って深圳まで行き、ちょっとの時間だけ中国本土に入りました。今から考えると、香港と中国本土の良い関係ができる夜明け前で、少しずつアジアが変わるような気がしていました。当時はまだ高校の教員でした。

その後大学に移り、英語教員養成研修の調査研究で、2000年ごろから頻繁に訪問しました。香港大学、香港中文大学、香港理工大学、香港教育大学、香港バプティスト大学、香港シティ大学などで多くの先生と交流しました。特に印象的だったのは、英語の言語能力評価(the Language Proficiency Assessment (English Language)(LPAE)の調査でした。当時の香港は、英語は重要ですが、住んでいる人の多くが広東語を話し、公的な仕事では英語が主流という不思議な場所でした。返還以後は、普通語(北京語)が公用語となり、政治的にも経済的にも社会的にも複雑な場所となりましたが、英語はますます重要な言語となり、教育においては徹底されていきました。その過程を15年ほど調査していました。

しかし、返還依頼尊重されてきた一国二制度(one country, two systems)が、2014年ごろから中国本土の圧力により、形骸化し、現在は完全に民主的な力は排除されてしまいました。私はこの頃から香港には行かなくなりました。調査研究の興味関心がヨーロッパに移ったせいもありましたが、なんとなく行かなくなりました。それでも香港大学や多くの大学ではバイリンガル教育やCLILの研究は盛んで、アジアの言語学習や言語教育の連携は維持したいと考え、中国本土や他のアジアの国やオーストラリアとの共同研究は続けていて、香港の状況は危惧していました。コロナもあり、その中で、私も大学を退職する年齢となり、今日に至っています。

香港はとても魅力的な場所で、私自身の調査では、言語教育的な観点からすると日本のモデルとなる要素をたくさん持っている場所だといまも思っています。仕事では、英語と中国語が中心になりますが、生活面では圧倒的に広東語です。このようなバイリンガル、多言語状況に、日本も次第に近づくことが必要だと思っています。単に英語教育だけを推進するのではなく、日本語を大切にしながら、自然に多言語多文化状況を少しずつ進めることが、今後の日本にも求められてくると思います。しかし、英語教員に英語力のテストをしている点は、決して望ましいことではないと、私の調査では結論づけています。英語教員の英語力テストの中に、Classroom Language Assessment(授業中の言語使用の評価)というのがあり、興味を持って調べました。結果はほぼ多くの教員が合格しています。英語の授業は英語でするという方針のもとに、このような評価項目があります。この評価は、授業運営面ではとても参考になりますが、私の調査では、批判的に結論づけました。

香港の英語教員の英語力テストは、台湾でも中国本土でも同様の志向です。中国的なアプローチですが、日本ではあまり意味をなさない可能性があります。それよりも、より教育的なアプローチを重視すべきで、英語教員に英語力をさらに高める研修の機会をもっと多くすべきというのが、私の結論です。香港での調査結果も基本的にその意向が強かったと考えます。ただ単に技能だけのテストは決してよいとは思えません。

香港は、香港という環境に適した教育や経済をもっと推進すべきですが、現在は、それが伸び伸びとできない状況になり、残念でなりません。香港は、シンガポールととともにアジアでは、一つのモデルとして進んでいたと思います。アジアの英語教育や言語教育が香港やシンガポールを中心に発展し、それが、中国本土、台湾、韓国、フィリピン、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア、日本などと連携して進むことが、私としては望ましいと思っていましたが、現在は、政治的な問題が大きくなり、そのような平和的な連携がうまく行かないのがとても残念です。香港は強かに生き延びて発展していただきたいと願うばかりです。


香港は 花は葉になり したたかに